法然上人の最晩年、筆頭弟子の信空上人は、
「師の没後、どこを拠点にして活動すればよいでしょうか」
と尋ねます。それに対する法然上人の答えが標題です。
師は仰います。「遺跡を一ヶ所に定めてしまうと教えが広まらなくなってしまう。生涯をかけて問い求め、伝えてきたお念仏の輪を全国へ弘めてほしい」と。
「お寺でなくても、たとえば漁師さんが浜辺の小屋で念仏を唱えるならば、そこが私の遺跡だと思ってほしい」と。
涙なくしては語れないお話です。実際のご法話でも、「大きな霊場・旧跡でなくても、このお寺が、そして皆さんのお家が法然上人の遺跡となるのですよ」と感動的にお伝えすることです。
* * *
と同時に、これはやはり弟子たち(今日の僧たち)に対する厳しい訓戒です。
寺の建物(伽藍)を守ることに必死になり、その立派さに頼んでばかりいて、肝心の教えを広める努力を怠ってはならないぞ、という戒めに他なりません。
お堂と伝道のどちらが大事か?などという議論は不毛で幼稚です。
しかし。
心を奮い立たせて熱烈な伝道に向かう前に、やっぱりお堂の維持をどうしていこうか、我が身の末路は… などと、心が向きがちなことに反省しきりです。
Comments