お先に...
- 中村法秀

- 10月27日
- 読了時間: 2分
近所の和菓子屋さんでの出来事。
行列が出来るほどの名物。
久しぶりに並んだ。
コロナ以来、入店は1組ずつの制限。
こじんまりとした店内でもあり、結果的には注文・手渡し・精算がスムーズなのだろう。
店先で数組の客が待つことになる。
そのために長イスが用意されている。
わずかな時間ながら前後の見知らぬ客同士が会話することも。
年配の男性と、片や家族連れのご婦人が話している隣に腰かけた。
家族連れは横浜からお越し。お寺へ観光しての帰り。
男性が住まいを聞かれて、大阪府の北の方、京都に近い所からと答えて驚かれている。
車で1時間。お餅を買うためだけに?と。
家族みんなが好きでして、と応じている。
男性は、おいしいですからね、どうぞ今度は横浜から新幹線で(わざわざ)買いにいらしてください、と笑いが起こる。
2組ともお店に入られて、独り店先に居て秋風に揺られる。
良いなぁと微笑んだ。
たまたま居合わせた人と軽く談笑することの妙。
最近はそういう場面や経験をしなくなって久しい。
先に出てきたその男性が、立ち上がる私に
「お先に...どうも」
と会釈してくださった。
それもまた、さりげなく、気持ちいい。
そう、こういうのが日本人の美徳じゃないか。
他にも狭い空間で他人の直前を横切る時にそっと片手で御免と空を切る 心づかいとか。
(お相撲さんが土俵下で審判を務める親方の前を通る時の作法を見てほしい)
大げさな言い方かもしれないけど、これが通じないと感じることがある。
世代で括るのはどうかと思うが平成生まれくらいの若い世代。
遊園地で、買い物先で、公衆トイレで。
わりと個を意識できる場面で「お先です」と
後の人に声を掛けても、怪訝そうに不思議な顔をされるか、
無表情のまま無視されることがあまりに多い。
「どうぞ。遠路お気をつけて…」と返すと、
輪には入っていなくても、話は聞いていたことが伝わる。
私の坊さん姿を見て反射的にか、「當麻寺の方ですか?」と聞いてくださる。
この辺を知っているかどうかを試すように、“竹内の…” とは言わず、
「いえ、近くの者です…」と返してしまったのが少し名残り惜しくなった。
とても短いやりとり。
爽やかなふれあいだった。
夕食後に家族でいただき、
娘も「別腹!」と、ほお張る顔を見て、
大阪からでも買いにくるよな、と納得。
ごちそうさまでした。




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