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『法然上人伝記(醍醐本) 中村法秀ノート』 (2021年・私家版)

更新日:2022年6月12日



法然上人をきちんと紹介している本が少ないことを以前にも書いた。


今回は史料そのものの紹介である。専門的な内容、しかも私家版。

恐縮至極ではあるが、もしこのページを見て、浄土宗僧侶はもちろん、一般の方でもその気になって読んで頂けるならば、幸いと思って紹介する。


法然上人の伝記は祖師の中で最も多いと言われる。そのうち最古と目される「醍醐本」と呼ばれる伝記についての私のノートである。『仏教古典叢書』(大正12年・中外出版)を底本として「書き下し」「語句調べ」「現代語訳」を試みた。


醍醐本は、法然上人滅後30年の仁治2年(1241)ごろの編纂で、上人の言葉を生々しく伝える第一級の史料でありながら、同様の作業を施した専門書も一般向けの書籍も出されておらず、現在宗内関係者でさえ入手が困難な状況が続いている。もっぱら学問の世界の史料として秘蔵されて日の目を見ない。


その状況に疑問と憤りを感じ、浅学非才を省みずに広汎の宗徒に通読されることを意図した。印刷の実費(500円)と送料で希望者にお分けする。


国宝『勅修御伝 法然上人行状絵図』(知恩院蔵)が伝記の決定版であり、その外を見る価値が研究者以外に認められていないというのが表向きの理由にはなろうけれど、学者・布教家・政治畑それぞれが鼓吹を怠っているだけであって(というより研究者以外は存在すら知らない)、そもそも祖師への憧憬・探求心が希薄だから、というのが正しい分析だと思う。


祖師の没後100年を期して勅命を奉じて作られた『行状絵図』は、それまでの伝記を集成する見事な文章と絵巻であって抜群にすばらしく確かに完成形ではある。

しかし、一方で醍醐本のように祖師の姿を直接知る弟子・孫弟子が記した文章には自ずからなる迫力がある。美辞麗句がなくとも当然祖師を敬って余りある心が溢れている。


現代を生きる信心薄き私も含め、舌先三寸で自分にとって都合の良い、得手勝手な祖師像を語る坊さんは、もっと初期文献をひも解いて、素直に、謙虚に学ぶべきだと思う。

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