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第5章「黒谷修学」

更新日:2022年7月8日




【解説】

 法然上人は、戒律の専門家である叡空上人を師匠に求めて黒谷に隠遁されました。師匠の許で修行に専念し、一切経を読み込む中で盛んに議論もなされたようです。

 ある時、「戒律の魂は何に宿るのか」という議論になり、師は「心」であると言い、弟子は「体」だとしました。


 師匠の言うことは絶対です。しかし、師の説を頑として受け入れない弟子の法然上人に対し、とうとう師(叡空上人)は腹を立てて、木枕で叩かれました。

 法然上人の気骨と師匠の人間味が感じられ、修行時代の様子が窺われる非常に面白い場面です。


 実のところ天台大師(智顗)は、著作の中で両方の説を説いておられるのでどちらも正解なのですが、厳密に戒律について論究する時に「体」とされているので、師はその点を認められてか、折れて弟子に詫びを入れられます。


 伝記作者は、ここでも法然上人を讃える記述意図なのでしょうけれど、私は、相手が仮に弟子であっても誤りを詫び、教えを乞う柔軟な姿勢を持たれている叡空上人の偉大さを語る出来事だと思うのです。


 法然上人の、常に経説・祖師に論拠を求めていく実証的な学問態度は、間違いなく師匠から受けた影響であるはずです。

 それこそが、のちの法然浄土教(宗)の構築においても、重要なポイントになっていくのです。

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